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親父の家政婦だった女 第三十七話

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「おい、ちょっと待て! なぜそんな……それは約束が違う!」
 俺は必死に抗議したが、西岡は聞く耳を持たなかった。全く動じずに、軽やかな手つきでてきぱきと部品を組み立てて、ペニスを透明な牢の中へ閉じ込めてしまう。途中、ペニスはまたも大きくなろうとしたが、貞操具を装着する速度の方が速かった。大きくなろうとしたペニスは、素早く固定されたペニスケースに阻まれて、結局、小さいままに固定されてしまったのである。西岡は仕上げとばかりに、ゆっくりと南京錠を施錠した。パチリという高い金属音が、俺の耳には牢の重い扉を閉める重厚な金属音に聞こえた。

 ペニスを封じてしまうと、西岡の表情は急に柔らかくなった。俺の上半身を抱え起こしながら云う。
「よくご決断されましたね、二十日間の禁欲を。健一様のご決断に従いまして、残り十日間、しっかりとロックさせていただきます」
 最初、俺には、西岡が何を云っているのかよくわからなかった。
「俺の決断に従って? どういうことだ」
「あら、二十日間の禁欲に挑戦されるとおっしゃいましたよね」
「う、む、それは確かに云ったが」
「ですから、今日までが十日間、明日から残り十日間を我慢されればそれでちょうど二十日間の禁欲でございます」
 この言葉でようやく合点が行った。西岡が何を考えているのか、理解できた。俺の考えは違った。俺はてっきり、今日は射精できるものと思っていた。そうしてそこから二十日間、新たに禁欲期間が始まるものだと。

 そのことを西岡に伝えたら、誤解を与えてしまったようで申し訳ありませんと謝られた。謝られただけで、西岡は自分の考えを撤回するつもりはないようだった。俺は西岡と議論することを殆ど諦めた。結局、どのような主張と主張がぶつかっても、西岡は自分の考えを曲げるつもりはなく、しかも貞操具の開錠権限は彼女の手にあり、さらには、俺の側には、寝込みの窃盗未遂といい、足首の鍵取りゲームでの敗北といい、持ち出されて不利になる条件は充分に揃っていて事欠かないのである。今までの経験から俺は、西岡と議論を戦わせてもこちらに有利なことはないと学習していた。それで、西岡の主張――今日からさらに十日間の禁欲――をすんなりそのまま受け入れてしまった。

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Author:右斜め下
人が苦しむ物語が好きなんだけど、苦しんでいれば何でもいいってわけでもない。
自分でも「こういう話が好きです」と一言で言えないから、好きな話を自分で書いてしまおうと思った。
SとかMとかじゃないんだ。でもどっちかっていうとM。

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