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親父の家政婦だった女 第四十六話

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 ペニスを西岡に洗浄してもらうことになった。何も西岡にやってもらわなくてもよかろうとも思ったが、禁欲期間中に自分のペニスに自分で触れるという行為が、しかも西岡の目の前で触れるという行為が、何となく不道徳のような気がしたし、何より西岡が洗いますと云ってきかなかったので、洗ってもらうことにした。再び石鹸を手に取り、細かく泡立てる。西岡は俺が立っている目の前に膝をつく。細かく泡立った白い両手で、両側から俺のペニスを包み込むように手を伸ばした。手のひらのくぼみの部分にちょうどペニスが収まるように、ふわりと包み込まれた。泡の細かい粒子の一粒一粒が、竿を、包皮を、亀頭の先端を撫でているようだった。
 俺のペニスを挟んでいる西岡の両手が、ペニスを挟んだまま回転するようにスライドした。ペニスを左右から挟んでいた手は、上下に挟むように位置を変えて、下の手が裏筋を通って陰嚢に軽く触れた。その動きで、包皮がまた少し剥かれ、亀頭の露出面積が少し増えた。上の手はちょうどその亀頭に当たる所にあり、上下に挟んで擦るともなしに擦るような動きが、非常に効率よく俺の性感を高めていた。それは危険な動きであった。本当に洗浄を目的とした動きなのかあやしく思われた。何かを勘違いして俺を射精に導こうとする動きのように思われた。換言すれば、その動きのせいで、俺のペニスは射精に刻一刻と近づいていた。

 西岡は親指と人差し指で輪を作った。その輪を亀頭の先端部分から押し付け、亀頭を刺激しながら包皮を剥くように、雁首に向けてずにゅりと滑らせた。石鹸の泡が、潤滑油の役割を果たして、痛みを伴わず、亀頭から快感だけが送り込まれた。親指と人差し指で作られた輪は、雁首の溝にとどまり、そこでゆっくり、小さく、回転運動をして雁首を「洗浄していた」。それが本当に洗浄していたのかどうなのか、よくわからない。もう一方の手は、ペニスの下へ回り、竿の中ほどで余っている皮を上下に揺さぶっていた。それらの動きで、俺はもうほとんど射精しそうなところまで高められてしまっていた。

 出る。

 それは本当に久しぶりの感覚だった。精巣から、何か、とてつもない熱を持ったエネルギーの塊が駆け上がってきそうなのを感じた。それはただの精子や精液ではなく、オスの本能の最終目的であって、全身がその駆け上がる射精感に喜びを感じていた。全身の中で、一部分だけ喜びを感じていない部分があったとすれば大脳であった。いや、大脳も確かに喜びを感じてはいたが、それ以上に危機を感じていた。今はまだ約束の期日ではない。二時間ばかり早い。こんなところで射精してしまっては西岡に何を云われても何も云い返せまい。その危機感が快楽に耐える力となった。
「やばい!」
 俺は西岡の手首を掴んで、無造作にペニスから引き剥がした。あと少しで射精してしまいそうだったペニスから、ぎりぎりのところで西岡の手を引きはがすことに成功したのである。ペニスはとっさのところで寸止めを受けて、ぴくりと一度痙攣をしたが、精液を漏らすには至らなかった。輸精管の根元で、早く出たいと精子が渦巻いているのが感ぜられた。
「どうなさいました」
「いや、すまん。射精してしまいそうだったので、つい」
「まあ、それは気がつきませんでした。申し訳ありません」
 手首をつかまれた西岡は、さして驚いた様子もなく、また悪びれた様子もなく、平然と謝った。それから間髪を入れずに、シャワーに手を伸ばして云う。
「では、石鹸を洗い流させていただきますね」
 だからちょっと待て。
「いやいや。今、洗ってもらっている時に、射精しそうだったんだよ」
「それは危なかったですね」
「だから、今シャワーをかけるとヤバいかもしれない」
「かしこまりました。健一様、ご自分で安全と思われたときにシャワーをお使いください」
「わかった。そうしよう」
 云われた通り、ペニスが落ち着くのを待つことにする。安全のため、少し長めに待った方がよいだろう。待つ間、西岡はバスタブに腰掛けた。俺も倣って西岡の隣に腰掛けることにした。

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Author:右斜め下
人が苦しむ物語が好きなんだけど、苦しんでいれば何でもいいってわけでもない。
自分でも「こういう話が好きです」と一言で言えないから、好きな話を自分で書いてしまおうと思った。
SとかMとかじゃないんだ。でもどっちかっていうとM。

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