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親父の家政婦だった女 第五十四話

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 その深夜、西岡が俺の寝室へ侵入してきた。まだ起きていらっしゃいますかと尋ねる押し殺した囁き声に耳をくすぐられて、俺はなぜかわからないがエロスを呼び起こされた。
「今日、食器の準備を手伝ってくださったご褒美です」
 西岡は囁き声のままそう云って、布団に横から潜り込んできた。貞操具が解錠され、一週間近く封じられていたペニスが西岡の指先で弄られる。俺は悦びに身を震わせた。西岡の指が雁首の周りを二周して、陰茎の裏筋に熱く濡れた舌の感触を感じたところで俺は達してしまった。食器の準備を手伝った「ご褒美」が、射精であるらしかった。
 

 次の日は、朝食も夕食も、食器の準備を頼まれた。俺は云われたとおりに食器を準備した。しかし、その晩、「ご褒美」は与えられなかった。

 その次の日も、同じように食器の準備を頼まれた。俺は云われたとおりに食器を準備した。しかし、その晩も、「ご褒美」は与えられなかった。

 次の朝、俺は少し早く起きて、自発的に台所へ行った。何か手伝えることはないかと聞いたら、西岡は心底嬉しそうな笑顔で、「お皿の準備をお願いします」と云った。そんなに喜んでくれるのならばと、夕食の時にも同じように自発的に手伝いを申し出た。その晩、俺はシャワールームで西岡に射精させてもらえた。

 その日から、食器の準備は俺の役割として固定した。初めは「手伝ったから感謝された」はずの食器の準備が、徐々に「やって当然」の役割として定着していった。「やって当然」の役割をこなしたからと云って「ご褒美」が期待できるはずはなく、むしろ、役割を放棄するようなことがあれば罰を受けてもおかしくないような雰囲気が漂っていた。無論、西岡は「やって当然」とか「罰」などという言葉は使わなかったから、俺は「何かがおかしい」と頭の片隅で感じながらも、何がおかしくてこうなってしまったのか特定できずにいた。こなすべき当然の役割をこなしながら、「ご褒美」が与えられない日々がしばらく続いた。

 数日後の朝、西岡は次に、俺にゴミ出しを頼んだ。俺は新しい任務を与えられて、表面上は渋々、しかし内心はなぜか心躍るような喜びを感じながら、朝の新しい任務に従事した。新しい任務の何をそんなに嬉しく思ったのか? ちょっと自分でもわからなかった。

 その晩、案の定、西岡がシャワールームに入ってきた。案の定? 俺は朝のゴミ出しをしながら、すでに夜に「ご褒美」がもらえることを予期して、それで心を躍らせていたらしかった。俺は後ろ手に手錠をかけられ、バスタブの縁に腰掛けさせられた。「ご褒美」だからと、俺は甘んじて従った。西岡はその前で膝をついて、貞操具を外した。

 そこまではよかったが、今回はなかなか射精させてもらえなかった。亀頭や陰嚢は執拗に撫で回されるが、肝心の雁首に触れてくれない。あるいは、ペニスそのものに全く触れずに、俺の胸板だけを指先でつつく。焦らされているのだとわかったが、後ろ手に手錠では抵抗のしようがない。この数日、空しい「ご褒美」を心の頼りに任務をこなしてきたフラストレーションが、ここへきて、一気に凝縮されたような気がした。「ご褒美」なのか、そうでないのか? そればかりが気になって、しかし、口に出して聞くのは躊躇われて、気が狂いそうだ。

 西岡の口角が上がった。
「どうして泣きそうな顔をされているんですか」
 俺は荒い息をして西岡を見返した。彼女の目は返答を求めて俺の目を放さなかった。
「どうしてですか?」
 再び西岡が尋ねた。
「西岡が、焦らす、から」
 俺は何とかそれだけ答えた。
「そうですか? ではやめてしまいましょうか?」
 西岡は手を離した。俺は黙っていた。やめないでほしいなどと云えば彼女を増長させるだけだと思った。
「あらあら、もっと泣きそうな顔になられて、おかわいそうに。本当はやめないでほしいんですよね?」
 だが、黙っているだけでは意味がなかった。彼女は奔放で的確な想像力で、俺の内心をぴたりと云い当てた。俺は黙っていた。黙っていては西岡の好き勝手な解釈を許すことになると思ったが、違うとはどうしても云えなかった。

 西岡は俺の胸板に人差し指で「の」の字を書きながら、さらに畳みかけた。
「今朝、ゴミ出しを頼んだとき、健一様はとっても嬉しそうでしたね」
 そんなことはないと云いたいが云えない。
「先ほど、手錠をかけさせていただいたときにも、ずいぶんおとなしく従ってくださいましたね」
 違うと云いたい。云えない。俺はずっと黙っている。
「もしかして、ご褒美を期待されてたんですか?」
 「ご褒美」と云うところで彼女の指先が軽く亀頭に触れた。透明な液が糸を引いた。
「今日、折角ですからご褒美を差し上げてもいいんですけれども」
 そこまで云ってから、西岡は不意に語調を変えた。幼子に寓話でも語るような、わざとらしい口調である。
「知ってます? このまま続けていくと、いずれメイドの言いなりの操り人形になってしまいますよ」
 操り人形。俺は、西岡の人差し指が亀頭に触れたときに糸を引いた透明な液を連想した。彼女の指先から、透明な糸が、俺のペニスにつながっている。彼女が少しでも指を引けば俺はすぐに意のままに従って、滑稽な踊りを踊らされるのだ。

 俺が不気味な想像をしている間に、西岡はペニスの包皮を下までぐいっと剥いてしまった。彼女の指先が亀頭に透明な液を塗り広げる。指先は、ロンドでも踊るように、ゆっくりと円を描いた。
「西岡の言いつけに従って、ご褒美をもらうことに悦びを覚えてしまったら……」
 指先の動きに連動するようにゆっくりとした眠くなるような声が、催眠暗示のような内容を紡いでいく。
「もう戻れませんよ。どんどん深みにはまっていってしまいます」
 西岡の目は俺の目を捉えて放さない。
「それでもいいのでしたら……」
 亀頭を滑る指先が、軽く爪を立てて、敏感な亀頭をツッと引っかいた。
「逝かせて差し上げますが……」
 ゆっくりと話す彼女の声が、脳味噌に浸透してくる気がする。
「いかがいたしましょう?」

 西岡は俺に返答を求めた。二者択一を迫っているような「いかがいたしましょう」は、しかし、俺に二つ目の選択肢を提供してくれていないように思われた。一つ目の選択肢は、「操り人形にでも何にでもなるから逝かせてほしい」と云えば済む。二つ目の選択肢は? 「操り人形にはなりたくないから我慢する」とでも云えばいいのか? それを云ったが最後、俺のペニスは永遠の牢獄に囚われるのではないのか?

 依然として俺は黙っていた。答えたら大事なものを失う気がした。黙っていることが、西岡に対してできる唯一の抵抗のように思われた。

 西岡はしばらく俺の返答を待った後、何の前触れもなく
「じゅう」
 と云った。俺はぎょっとして彼女の目を見た。彼女はにやりと笑って俺を見た。
「きゅう」
 無慈悲な響きを持つその言葉は、カウントダウンであった。
「はち」
「なな」
「ろく」
「待て、何だそれは」
 そのカウントダウンが何を示しているのか、容易に想像がついた。が、西岡が何事も明言していない以上、そのカウントダウンを脅しだとして非難するわけにはいかなかった。
「ご」
「よん」
 西岡は一定のペースで数字を下げてゆく。彼女の手はすでに俺のペニスを離れている。
「さん」
「に」
 そこで俺は、得体の知れない恐怖に耐えきれなくなった。焦りと恐怖が、正常な思考を奪ったと云っていい。
「……かせて、ほしい」
 慌てて絞り出したように掠れた声が出た。西岡はカウントダウンを止めた。
「もう一度、はっきりおっしゃってください」
 一度云ってしまったら、もう躊躇うことはなかった。
「逝かせてほしい」
 西岡はにっこり笑った。
「ご褒美がほしいんですね?」
 確認をとるように、少し首を傾げて俺の目を覗き込む。俺は何とも答えない代わりに、僅かに頭を縦に動かして、肯定の意を表した。

 「ご褒美」は与えられた。

 その夜、俺は操り人形の夢を見た。

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Author:右斜め下
人が苦しむ物語が好きなんだけど、苦しんでいれば何でもいいってわけでもない。
自分でも「こういう話が好きです」と一言で言えないから、好きな話を自分で書いてしまおうと思った。
SとかMとかじゃないんだ。でもどっちかっていうとM。

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