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親父が死んで、親父の家政婦だった女がうちに上がりこんできた。何でも遺言に「遺産は全て息子の健一に相続する」「健一が一人前になるまでは面倒を見てもらいたい」とあったそうだ。
親父は医者で、金持ちだった。それで、俺は東京へ出て医学部に入った。独り暮らしを始めて一年半ほど経った九月、親父が死んだ報せが届いて、葬式やあれこれを済ませて東京に戻ったら、その女がマンションで待っていたから驚いた。
「お帰りなさいませ」
「誰だ」
「お父様の身の回りのお世話をさせていただいておりました西岡麻美と申します。お父様の遺言により健一様の身の回りのお世話をさせていただきたく存じます」
「だからっていきなり」
「慣れないお独り暮らしはさぞ不自由でしたでしょう。これからはしっかりお世話いたしますわ」
西岡とか云う女は、年恰好は二十代後半、さっぱりしたブラウスに膝丈のスカートで清潔な印象だったが、あまり人の話を聞かずに話を進めていってしまう性質なので調子が狂う。西岡が俺の世話をするようにと記した親父の遺言は本物のようで、半ば押し切られる形で、俺は西岡を雇うことになった。
親父が重用していただけあって西岡は優秀な家政婦であり、彼女が来てからうちの住環境は大きく変わった。部屋はきれいに整理され、衣服にはアイロンが利き、三食は豪華とまではいかぬまでも充分に整えられた。しかし、「不自由」が減ったかと云えばそうでもない。独り暮らしの時のような気ままな外食はできず、住み込みだから夜が気まずく、何より性欲処理の問題があり、西岡が買い物に出ている時を見計らうか、さもなければネットカフェの個室でも利用するような状況であった。
第二話へ
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