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王妃様は魔女 第一話

王妃様は魔女
 々、ある所に、武勇に優れ民を慈しむ王子様がいました。王子様は美しい娘を娶り、父王が亡くなってからは新しい王様に即位しました。美しい娘は王妃様になり、勇敢な王様と美しい王妃様のもと、平和な世の中がいつまでも続くかのように思われました。でも、ただ一つ違っていたのは、王妃様は、魔女だったのです。

 父王の命を終わらせたのも王妃様の仕業でした。王妃様がまだ王太子妃だったころのある晩、彼女は父王の寝室を訪れました。
「王子様が閨を共にしてくださいません。王様、私はどうしたらよいのでしょう」
もちろんこれは嘘で、王太子妃のほうが夜伽を断っていたのでした。彼女は王子様に魔法をかけて、彼女が好きで好きでたまらないようにしていたのですから。父王はどぎまぎしながらこう答えました。
「そんなはずはない。あいつは早く世継ぎを儲けたいと申しておった」
王太子妃はさらに問いました。
「私には女としての魅力がないのでしょうか」
「いや、そんなことはない、そなたは充分に魅力的じゃ」
父王がそう答えると、王太子妃は左手の甲を差し出しました。そこには王子様から贈られたばかりの指輪が燦然と輝いていました。
「ならば、私が魅力的であると、証を立ててくださいますか」
王太子妃は父王の目をじっと見つめて云いました。父王は魅入られて、陶然として王太子妃の指輪に口づけました。
 次の朝、母君である王妃様がベッドの上で急死しているのが見つかりました。それからというもの、父王は毎晩、たくさんの蛇が手足に巻きついて身動きが取れなくなる夢を見ました。日が経つにつれ夢は次第に過激になり、大蛇に体を締め付けられて殺される夢になったり、たくさんの蛇が体中に噛み付いて毒で死ぬ夢になったりしました。寝ては夢で飛び起き、また寝ては飛び起きを繰り返して、父王は一晩に何度も殺される夢を見ました。父王は眠るのが怖くなりましたが、ずっと起きていることもできません。たとえ昼間でも、うとうとと居眠りでもしようものならすぐに蛇が体中に巻きついているのです。そうして父王は体調を崩し、最後まで蛇の夢にうなされながら亡くなりました。
 王太子妃は特別何をしたわけでもありませんでした。ただ父王の情欲を刺激して母王妃の嫉妬を燃え上がらせ、母王妃が父王を呪う力を少し強くしてあげただけでした。後は母王妃が自らの強すぎる呪いで命を落とし、その呪いが蛇の夢になって父王をゆっくりと呪い殺したのでした。こうして王子様はめでたく王位につき、王太子妃は王妃になったのでした。

 王妃様は次に、夫の王様を豚に変えました。王様が民や大臣たちの前に姿を現す必要があるときは、かかしに王様の服を着せ、王冠をかぶせて出しました。王妃様はかかしに多少の魔法をかけましたが、民も大臣たちも、王様の服と王冠だけを見て王様だと判別していたので、べつに魔法をかけなくても誰も気づかなかったに違いありません。
 豚にされても王様は王妃様のことが大好きでした。王妃様は豚にした王様を寝室で飼っていましたが、美しいドレスを汚したくなかったので王様が近寄ることを決して許しませんでした。ある日、とうとう王様が王妃様の足元にすり寄って、汚い鼻先をドレスのスカートにつけてしまいました。王妃様は怒って、王様をお城の豚舎に入れました。お城の豚舎で飼われている豚は、順次料理に使われます。王妃様は毎日、これが王様だった豚かもしれないとわくわくしながら食事を楽しまれました。豚舎の豚がすっかり新しいものに入れ替わるまで、王妃様のささやかな楽しみは続きました。

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右斜め下

Author:右斜め下
人が苦しむ物語が好きなんだけど、苦しんでいれば何でもいいってわけでもない。
自分でも「こういう話が好きです」と一言で言えないから、好きな話を自分で書いてしまおうと思った。
SとかMとかじゃないんだ。でもどっちかっていうとM。

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