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王妃様は魔女 第二話

第一話へ
 こうして王家を我がものとした王妃様は、もっと人が苦しむところが見たいと考えました。そこで、かかしの王様を使って、まずは軍隊の仕組みをがらりと変えました。今まではほんの少しの騎士と近衛兵がお城に詰めているだけで、いざ戦争となれば農民や流れ者を傭兵として雇っていました。それを、いつ戦争が起きてもいいように、職業軍人としての常備軍を組織したのです。当然、設備を整え、常備軍にたくさんの兵を徴集し、訓練し、養うのにはたくさんのお金がかかります。王妃様は、民に納めさせる税をぐんと高くしました。農村では、若い働き手が徴兵される上に、収穫した麦がごっそり税に持っていかれ、大混乱になりました。絶望に暮れる農村の様子をバルコニーから眺めて、王妃様はたいそう喜ばれました。
 常備軍に入隊した若者たちには、地獄のような厳しい訓練が待っていました。兵舎は五人ずつで一部屋になっており、五人のうちの誰かが訓練に音をあげたり集団行動に遅れたりすると、その本人ではなく他の四人が厳しい体罰を受けました。たちが悪いのは、本人がその罰を受けないという仕組みでした。連帯責任で罰を受けたほかの四人は、自分達が受けた罰以上にその張本人をいじめました。当然、訓練に耐えかねて逃げ出そうとする兵士もいましたが、一人が脱走に成功すれば他の四人が投獄されます。五人組は、互いを励ますというよりは監視して、必死で訓練について行きました。教官になった騎士たちも必死でした。受け持ちの常備軍の訓練成績が一番悪かった教官は、騎士号を剥奪して兵卒に落とすと王様に脅されていたからでした。騎士たちは、自分達が課す厳しい訓練の様子を見ながら、ああはなりたくないと思っていました。王様は昔はもっと心の優しい王子様だったはずだと顧みる余裕もなく、騎士たちは訓練の厳しさを競い合いました。

 常備軍がきちんと行進できるようになってから、王妃様は王様の蝋印を使って手紙を書き、隣の国の王様に使者を遣わしました。手紙は次のような内容でした、「我が国では、私が国王に即位してから初めての国王生誕祭を行います。極めて大切な祝典です。貴国が今までと変わらぬ親交を続けてくれるつもりがあれば、ぜひご出席ください。生誕祭では新しく組織した常備軍を披露するパレードも行います」。
 これを読んだ隣国の王様は腹を立てました。
「何だ、この手紙は。まるで脅迫状ではないか。余はこんな傲慢な招待状を今まで見たことがない。絶対に出席せんぞ」
憤る隣国の王様に、大臣が諫言しました。
「畏れながら王、お怒りはごもっともですが、ここは戦争を避けるためにも、出席しておくべきかと存じます。聞けば常備軍はかなりの規模だとか。それをパレードで披露してくれるというのですから、まずは王ご自身の目でそれをご覧になって、それから我が国も軍備を整えることもできましょう」
「むう、おぬしの云うことも一理ある」
大臣の言葉に、隣国の王様は生誕祭に出席することをしぶしぶ決め、王妃様が遣わした使者に手紙を持たせて帰しました。この生誕祭への出席が、隣国の王様に破滅をもたらすことになるのですが、しかし出席しなければ戦争になっていたでしょうから、どちらに転んでも破滅は免れなかったに違いありません。

第三話へ
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右斜め下

Author:右斜め下
人が苦しむ物語が好きなんだけど、苦しんでいれば何でもいいってわけでもない。
自分でも「こういう話が好きです」と一言で言えないから、好きな話を自分で書いてしまおうと思った。
SとかMとかじゃないんだ。でもどっちかっていうとM。

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