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聖トリニティ退魔士会 第一話

※この物語はフィクションです。実在する個人・団体とは全く関係ありません。
※また、キリスト教の皮をかぶった新興宗教を描いていますが、キリスト教を貶める意図はありません。オウム真理教を非難していても仏教を非難しているわけではないのと同様の事情と思っていただければ幸いです。

 大学のラウンジ、カウンター席で独り本を読んでいると、「あの、すみません」と女性の声がした。顔を上げると横には、俺と同じ年ぐらいの女の子が微笑んでいた。
「私、インカレで活動している『もみの木の会』という哲学サークルの者です。ちょっとお時間いただけますか」
「ええ、まあ、今ここで話をするぐらいならば」
何だか怪しげな奴が来たぞ。まあ、次の講義が始まるまで暇だし、顔は可愛いし、ちょっと話し相手になってからかってやろう。
「ありがとうございます、隣、いいですか」
「どうぞどうぞ」
女の子はすぐ隣の椅子に腰かける。ちょっとちょっと、距離が近いよ。
「あなたは神様を信じますか」
「えっ」
ド直球来たよ、これ。
「いや、ぜんぜん信じてないッス」
「それは、失礼ですが、どうしてですか」
「えー、どうしてだろう。そもそもアレだな、子どものころから宗教教育を受けてこなかったからかな」
女の子は真剣な顔で頷きながら聞いていた。
「なるほどなるほど、じゃあ、もし仮に、今『神を信じなさい』とか云われたら、信じます?」
「いっ、やー、どうかな。お化けとかでもそうですけど、見えないもの、聞こえないものは、信じないことにしてるんスよ」
「ああー、トマスの考え方ですね」
トーマス? 機関車か?
「トマスの話って聞いたことあります?」
「いえ」
「トマスはイエスの弟子の一人です。イエスは処刑されましたけれども、三日後に復活しました。トマスは復活の時にその場にいなかったので、あとから話を聞いて、こう云いました、『いや、私は信じない。この目でイエス様を見て、脇の下に手を入れてみるまでは信じないぞ』と。脇の下というのは、処刑の時に槍が通された場所のことです。他の弟子たちはトマスをイエスのところに連れて行き、トマスは実際にイエスを目で見て、脇の下に手を入れました。その時にイエスはトマスに云った言葉が興味深いんです、『見ないで信じる者は幸いである』。どう思います」
「えっ、ええー」
困ってしまった。これは哲学サークルとか云いながら、その実、宗教サークルっぽいぞ。

第二話へ
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右斜め下

Author:右斜め下
人が苦しむ物語が好きなんだけど、苦しんでいれば何でもいいってわけでもない。
自分でも「こういう話が好きです」と一言で言えないから、好きな話を自分で書いてしまおうと思った。
SとかMとかじゃないんだ。でもどっちかっていうとM。

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