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王妃様は魔女 最終話

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第六話へ
 しかし最後の最後で、王妃様のもくろみは外れました。常備軍の不在をつき、剣闘士の一人が反乱の旗を掲げたのです。その勇敢な剣闘士は、無益な戦争に反対し、他の剣闘士を味方につけ、鼓舞し、かかしの王様の(王妃様の)暴政を正面切って批判し、この国に秩序を取り戻すのだと、地下居住区を脱走、円形闘技場を占拠し、王妃様とかかしの王様のいるお城を目指して進軍しました。王妃様はびっくりしました。この乱れきった世のなかに、まさか秩序を取り戻すために立ち上がる勇士がいるとは思わなかったのです。王妃様はあまりに衝撃を受けたせいか、バルコニーで気を失いました。かかしの王様にかけられていた魔法は解け、今やだれの目から見ても王様の服を着たかかしにしか見えなくなりました。王妃様が魔法で操っていた金貸し屋は、糸の切れた操り人形のようにぱたりと倒れました。
 勇士の反乱軍は王様のお城を占拠しました。玉座に座っていたかかしを打ち倒して王冠を奪い、バルコニーで倒れている王妃を発見して縄で縛りました。勇士は国王の暴政の終わりを宣言して「暫定指導者」を名乗り、出征していた常備軍に帰還を命じ、海を隔てた隣国に戦争の全面停止を求めました。勇士は市民の集まっている前で王妃を断頭台にかけました。(王妃が今までに行った拷問のような残虐非道な処刑や剣闘士制度に比べれば、一瞬で命を奪う断頭台は極めて人道的な処刑方法といえましょう。)王妃はバルコニーで発見されてから断頭台で処刑されるまで、気絶して眠りこんだまま、ついに目を覚まさないまま命を終えました。まるで、悪しき魂が抜けてしまったかのような美しい姿でした。
 勇士は、今まで農民や商工業者にかけられていた重い税を撤廃し、人間らしい生活の再建に各自が尽力せよとお触れを出しました。大きすぎる国の領地を幾つかの郡に分け、郡ごと、さらには村ごとに、自治を許しました。人々の生活は少しずつ、本当に少しずつですが、人間らしさを増していきました。農民たちも市民たちも、勇士の仁政を神のごとく仰ぎました。勇士を国王に頂きたいという声があちらこちらからあがりました。しかし勇士は頑として「暫定指導者」の自称を譲りませんでした。そこで人々は尊敬をこめて勇士を「永世暫定指導者」と呼びました。

 日が過ぎ、月が変わり、年が巡って、国が幾度かの危機を乗り越えながらも平和と安定を迎えたころ、依然として「暫定指導者」を自称する勇士は美しい娘と出会い、すぐに恋に落ちました。勇士は娘を妻に娶り、民は勇士の結婚を祝福しました。
 民の信頼厚く賢明な「永世暫定指導者」と、美しい「永世暫定指導者夫人」のもと、平和な世の中がいつまでも続くかのように思われました。

めでたし、めでたし。

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右斜め下

Author:右斜め下
人が苦しむ物語が好きなんだけど、苦しんでいれば何でもいいってわけでもない。
自分でも「こういう話が好きです」と一言で言えないから、好きな話を自分で書いてしまおうと思った。
SとかMとかじゃないんだ。でもどっちかっていうとM。

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