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全国中学校対抗ペイント弾合戦 第八話

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「えー、っと、残念なお知らせです。ダイトと、二組のリョウスケが、ペイント弾で撃たれました。この五時間目は、予定を変更して学活にします」
生徒たちがざわつくことを想定していたが、意外と反応は薄かった。昼休みに一通り噂話が飛び交って、もう驚かないらしい。
「学活の内容を説明します。まずダイト本人には、撃たれた状況を説明できる範囲で説明してもらいます。その後、司令のトシヒコが司会で、ダイトに制服を譲ってくれる人を募集する時間を取ります。それで譲る人が現れても現れなくても、最後に、今後の対策・方針を、話し合う必要があれば話し合ってください。わかりましたか。わからないことがある人? よし、いない。では、ダイト、前へ」
ダイトが神妙な面持ちで前へ出る。わき腹から背中にかけてが蛍光ピンクに染まっている。よく見ると二発か三発ぶんの塗料が飛び散っている。
「はい。ダイトです。司令部の任務中のことです。情報が外に漏れるのを防ぐため、みんなの前で詳しいことを話さないようにと司令部から云われているので、話せるところだけ話します。リョウスケと二人での任務中、他校の生徒に待ち伏せされて後ろから撃たれました。突然のことで、撃ち返そうとする前にすでに背中にペイント弾を当てられていました。撃ち返すわけにいかなかったので、逃げ帰ってきました。任務は達成できませんでした」
ルールでは、ペイント弾が当たった生徒は銃を撃ってはならないと定められている。それは街中に張り巡らされた防犯カメラでチェックされていて、違反が見つかるのが度重なると学校全体が失格になる。ダイトはそこのところのルールをちゃんと守ったことを主張した。
「ダイト、それで結構。ダイトに何か質問がある人はいますか」
ヒロアキが手を上げる。
「撃たれた場所はどこで、どこの生徒に撃たれましたか。差支えなければ教えてください」
「これは、……云っても大丈夫なのかな、トシヒコ?」
ダイトがトシヒコの指示を仰ぐ。トシヒコは、「場所とか相手校なら大丈夫だろ」と軽く返した。
「三鷹七中付近、市立西部図書館から少し入ったあたりの所で、相手は、確信はありませんがたぶん七中生です」
エミが手を上げる。
「相手は何人組でしたか」
「隠れていましたが、見えた限りで三人はいました」
「他にダイトに質問のある人はいますか。いない。では、司会をトシヒコに任せます。ダイトに制服を譲ってくれる人を募集する話し合いをしてください。ダイト、あなたはこっちに座っていなさい」
ダイトは黙って従う。トシヒコは怪訝そうだ。
「先生、募集する話し合いって何すりゃあいいんですか」
「あなたは、ここでダイトを失ってもいいと思っている?」
トシヒコは首を横に振る。
「誰も制服を譲りたくないとなった場合、ダイトは一中の生徒でいる資格を失って訓練所に行くことになります。クラスで、学校全体のことを考えて、誰がダイトの代わりに制服を失うのが一番学校のためになるか、ということを話し合うのが、この学活です」
トシヒコは渋面でしばらく思案した後、「わかりました」と軽くうなずいて教卓に手をついた。みんなの前で話をするときのトシヒコの癖だ。

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Author:右斜め下
人が苦しむ物語が好きなんだけど、苦しんでいれば何でもいいってわけでもない。
自分でも「こういう話が好きです」と一言で言えないから、好きな話を自分で書いてしまおうと思った。
SとかMとかじゃないんだ。でもどっちかっていうとM。

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