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親父の家政婦だった女 第十四話

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 西岡が戻ってきたときに手にしていたのは、黄のラベルの貼ってある茶色の薬瓶と、水の入ったグラスであった。「健一様ならご存知かもしれませんが…」と前置きして、薬瓶の説明を始める。
「これは、栄養サプリメントとして市販されているビール酵母の錠剤です。副次効果として、精子の生成を活発にする作用があります」
 ちょっと待て。
「一回の服用は十錠、毎食後です」
 ちょっと待て。
「多いと思われるかもしれませんが、天然の素材をそのまま固めたものですので、心配はありません」
 ちょっと待て。
「これを今、十錠飲んでいただけましたら、貞操具を外してさしあげますわ」
「ちょっと待て」
 それはつまりアレか。俺は明日も元気に精子を作って、それを溜め込まなくてはならないということか。
「どうなさいました?」
「いやいやいや、云ってることおかしくない?」
「おかしくても、おかしくなくても」
 西岡は平然と答えながら、また俺の足元に膝をついて座る。
「健一様にできるのは、飲むか飲まないか、選ぶことですよ」
「ちょっ、ええっ? それはひどいんでは……?」
 女は抗議に耳を貸さず、俺の太ももの間に身体を割り込んで、内股や陰嚢をいじり始める。収まりかけていたペニスはそれでまた刺激されて拷問の苦悶を味わうことになる。もはや選択肢は一つしかないようなものだった。
「わかっ、わかった! 飲むよ!」
「それで結構です。どうぞ、十錠ありますから気をつけてお飲みください」
 西岡は俺の後ろ手の手錠を外す。ようやく手が自由になった俺は、しかし、たぶんここで薬を飲む以外の行動を許されていないんだろうと思う。あれだけいじめ尽くされて、これ以上西岡に反抗しようという勇気は、到底湧いてこなかった。

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右斜め下

Author:右斜め下
人が苦しむ物語が好きなんだけど、苦しんでいれば何でもいいってわけでもない。
自分でも「こういう話が好きです」と一言で言えないから、好きな話を自分で書いてしまおうと思った。
SとかMとかじゃないんだ。でもどっちかっていうとM。

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