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悪魔とトオル 第十話

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 トオルがケイスケの胸を刺してからケイスケの身体が床に落ちるまで、ずいぶん長い時間のように思われました。その間、私は、トオルが自分のしたことをキチンと冷静に理解できるように、トオルの魂に普段以上の理性を与えました。
 アヤの胸には、理不尽に対する恐怖と怒りとが燃え上がっていました。長い時間沈黙があり、その間、トオルは決してアヤの方を見ようとせず、ケイスケの死体が転がっているあたりを見つめて、浅い呼吸をしていました。アヤは理解できないといった表情でしばらくトオルを見つめた後、バッグの中に手を入れて携帯電話を握りました。警察にでも電話しようというのでしょう。
『トオル、アヤが携帯電話を持ってるわ。ケータイはまずい。アヤちゃんの手からケータイを奪って』
 トオルは今や、自分がケイスケを殺してしまったことを頭で冷静に理解していましたから、ケータイが自分にとって不都合なことも瞬時に理解しました。トオルはアヤの手から携帯電話を素早く強奪しました。そのはずみで、トオルはテーブルの上からアヤの上に覆いかぶさるようにして前のめりになりました。
「やだ、っ、やめて、助けて」
アヤは暴れました。次には自分が殺されると思ったのでしょう。トオルをどうにか押しのけようとしましたが、もともと体格で勝るうえにトオルは私の魔力の加速を受けて身体能力が向上しています。
「誰かーっ! 誰か、助けてーっ!」
 アヤはとっさの判断で、外に助けを求めようとしました。全く賢明な判断です。私はこの晴れ舞台にアヤという優秀な喜劇役者が乗っていることを嬉しく思いました。さあ困ったのはトオルです。まさかこんな展開は予想していませんでした。最初にトオルが思い描いていたのは、悪逆非道の彼氏から姫を救い出す勇者としての自分でした。姫は勇者と結ばれるか、そうでなくとも勇者に感謝して勲章を授けるぐらいのことはしてしかるべきところでした。ところが、アヤの反応は真逆でした。トオルは、幸せな日常をぶち壊す悪魔の役割をいつの間にか自分が演じていたことに気が付きました。そうして、このままではまずいと判断しました。
「助けてーっムグ……」
アヤは助けを呼んで叫び続けようとしましたが、トオルの両手がそれを遮りました。トオルはアヤの上から覆いかぶさるように馬乗りになり、アヤの口に両手を押しつけ黙らせようとしました。ですが人間の手は口からの声を完全に遮断するほど大きくありません。アヤの声はまだ漏れ聞こえていました。
 トオルは、声を止めるためには息を止めなくちゃと思いました。それで、アヤの白く細い首に両手を巻き付け、力の限りに絞りました。
 アヤは必死に抵抗しました。声も出そうとしましたが、トオルのもくろみ通り声はほとんど出なくなっていました。アヤはトオルの手首に爪を立てて手をどけようとしましたがその力は見る見るうちに弱まっていきました。
 トオルの魂の中には、ケイスケを殺したことで行き場を失った憎悪と殺意とが、快楽の期待と混ぜこぜになって渦を巻いていました。
 トオルの本能はこの格闘を、動物的な性交と区別しませんでした。トオルは性的な興奮を催していました。
 トオルの中で、憎悪と殺意と、そして快楽への期待とが、出口を、はけ口を求めていました。
 そのはけ口は今、トオルが馬乗りになっている下に、徐々に力を失いながら横たわっていました。
 トオルはアヤを征服しているのであり、首を絞めたことでアヤの抵抗が弱まった今、もはや彼女の肉体はトオルのもののように思われました。
 トオルのペニスは、トオルのズボンとアヤのスカートという非常に薄い布数枚を隔てて、アヤの肉体に密着していました。

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右斜め下

Author:右斜め下
人が苦しむ物語が好きなんだけど、苦しんでいれば何でもいいってわけでもない。
自分でも「こういう話が好きです」と一言で言えないから、好きな話を自分で書いてしまおうと思った。
SとかMとかじゃないんだ。でもどっちかっていうとM。

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