2ntブログ

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://wrightdown.blog.2nt.com/tb.php/19-f4ca86b2

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

全国中学校対抗ペイント弾合戦 第三話

第一話へ
第二話へ
 訓練所と聞いて生徒の顔が強張るのがわかる。勿論、上級生から話には聞かされているのだろうが、いざ自分が「撃たれたら人生終了のお知らせ」の学年になるにおよんで、今さら実感がわいたのだろう。
「ただし、この制服は、人に譲ることができます。例えば銃の扱いがとてもうまいA君と、絶望的に下手なB君がいたとしましょう。いくら射撃がうまいA君でも、ちょっとした不運で撃たれて制服を汚されてしまうことはあり得ますね。そんなとき、以降の戦いでA君を失うことは学校にとって大きな損失です。ですから、B君は、学校全体のためを考えて、自分の制服をA君に譲り渡すことができます。そうなると、中学校を離れて訓練所に入所するのはA君ではなくB君、ということになります。もちろんこれを誰かに強制することはできません。必ずB君本人の意思で、制服をあげるよ、と決めなくてはなりません」
 ヤスコとノブキが暗い顔で俯いている。彼らは常日頃から体育を苦手としていて、陸上でも球技でも諦めて後ろの方でのろのろ走っているタイプの子だ。彼らを含め、三年に上がったら真っ先に撃たれるであろうと担任チームで予想されている生徒が、どうしても各クラス一人か二人はいる。残酷な云い方だが、そういう子には誰か他の子に制服を差し出して、身代わりに訓練所へ行ってもらうのが一番学校のためになる。
「最後に、銃のことについて説明します。資料は九ページです。銃は、ペイント弾専用のハンドガンが各自に一つずつ配られます。それとは別に、毎月の初めに、管理事務局から資料に載っている種類の銃のうちのいずれかが、何丁かずつ、支給されます。例えば、アサルトライフル、スナイパーライフル、ショットガン、それから特殊なところではペイントボールグレネード、手榴弾ですね。こういったものが予告なく無作為に支給されます。それから、銃だけがあっても撃てませんから、毎月初めにまとめて弾が届きます……もちろんペイント弾ですよ。弾は無限にあるわけではありませんから、よく作戦を練って戦う必要があります。こんなところですね、ルールの説明は。何か質問はありますか」
ダイトがじっと私の目を見つめたまま不敵ににやついている。ハナは至極深刻な顔で聞いている。エミは斜め後ろを振り向いてマナカに話しかけている。ヒロアキは頬杖をついたまま、眼だけで教室を見まわしている。ハヤトは人の話を聞いているのかいないのか、消しゴムとボールペンで何やら遊んでいる。十人十色ではあるが、戦争の学年がもうすぐ始まることに、みな緊張と昂揚を隠せていない。

「質問がないようなので説明はこれで終わりますが、今日の学活が二時間続きなのには理由があります。皆さんにはこれから、作戦司令部を結成してもらいます。学級ごとに、学級司令を一人選びます。それから、司令を補佐するのに必要だと思う役職を皆さんで話し合って決めてもらいます。ここで決めた役職に従って、新年度からペイント弾合戦を戦っていきます。もちろん問題点があればそのつど変更しますが、スターティングメンバーを決めるつもりでしっかり議論してください。はい、代表委員、司会やって」
代表委員のユウスケとエミが司会として前に出る。エミは人前に出て人に見られている時はちゃんとしようとするが、ユウスケはもじもじにやにやしながらズボンの裾をいじっている。勢い、エミが主に司会の務めを果たすことになる。
「えっ、学級司令を決めればいいですか」
エミが私に尋ねる。
「そう、まずはね。そうしたらあとは司令の人が仕切って、補佐する役職を決めればいいでしょう」
「わかりました。じゃあ……司令をやりたい人は手を挙げてください」
エミが教室を見回す。

第四話へ
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://wrightdown.blog.2nt.com/tb.php/19-f4ca86b2

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

右斜め下

Author:右斜め下
人が苦しむ物語が好きなんだけど、苦しんでいれば何でもいいってわけでもない。
自分でも「こういう話が好きです」と一言で言えないから、好きな話を自分で書いてしまおうと思った。
SとかMとかじゃないんだ。でもどっちかっていうとM。

最新記事

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR