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親父の家政婦だった女 第十話

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 次の日は大学の後期履修登録の日で、要するに夏休みが終わって後期が始まるのであった。それはいつもならこの季節の最も憂鬱な事項であるが、今回に限ってはそれ以上に気がかりなものがあって、それどころではないように思われた。夏休みの終わりの憂鬱を紛らわせてくれたという点では、俺は西岡に感謝しなければならないだろう。

 俺の股間には、今日もまた、西岡によって装着させられた透明な監獄が付いていた。しかも昨晩、性欲を煽るような悪戯をされたせいで、我が息子はいつ何どきでも所構わずに大きくなりたがる。無論、その試みは、下向きに性器を固定するプラスチック製の檻に阻まれて、俺はただ陰茎の痛みと欲求不満を溜め込むだけなのだが。教授に会っても友人に会っても、はたまた友人の彼女に会った時にも、弁えを知らぬ愚息は勃起をしたがり、俺はその度に冷や汗を流す。こんなことが毎日続くようでは俺の日常生活は崩壊してしまいかねない。

 西岡に手厳しく文句を云ってやろうと思って勢い込んでマンションへ帰る。と、そこに西岡はいなかった。夕方の時間帯である、大方買い物にでも行っているのだろう。しかし文句を云ってやろうと思った相手が居ないとなると肩透かしを食らったような気分になる。

 「鍵」。そうだ、鍵、俺の頭に「鍵」の一字が浮かんだ。普通、南京錠には合う鍵が複数作られている。西岡が首から下げていた鍵は一つ。他の鍵はマンションのどこかにしまわれている可能性が高い。そして、それを探すのは西岡のいない今しかない。
「あるとすれば、そうだな」
 クローゼットの引き出しの一つが、西岡の私物入れである。そして、いつも部屋の隅には簡素なハンドバッグが置いてある。が、今日はハンドバッグがそこに無かった。当然、買い物に出た西岡が携えていったとみるべきだろう。ならば、今探すのは引き出しをおいて他にない。

 西岡が来てから、ここの引き出しを開けたことはない。使用人とはいえ他人の私物であるから、当然と云えば当然だ。少しの罪悪感を振り切って開けると、一番上に、正確に折り畳まれた白いブラウスが入っている。これをのけて下を探し、また何事もなかったかのように元に戻すなどという芸当が果たして西岡本人以外の誰にできるのか、はなはだ疑問である。そう考えてから、今自分が非常に非常識な恥ずべき行為をしているという考えが鎌首をもたげてきた。そうだ、俺はこの引き出しを開けなかったことにしよう。そのまま閉めて、何も試みなかったことにするのだ。そう決意したところで、玄関の戸が開き、パンプスを脱ぐ音がする。西岡が帰ってきた。
「只今買い物から戻りました……あら」
 やばい。
「健一様、先に御帰りだったんですね」
 早く引き出しを閉めなければと焦りながらも、蛇に射すくめられた蛙のように、どうしても身体が動かない。

 西岡は俺の行動には一言も触れずに、ただ「失礼します」と云って俺のすぐそばの定位置にハンドバッグを置いた。そしてすぐまた俺の間近を通って台所へと抜けて行く。西岡がすぐ近くに来た時、よっぽど何か小言かからかいの一つでも云われるかと思って俺の背筋は痛いほど緊張し、冷や汗がとめどなく流れた。これで俺が何か後ろめたいことを試みていたことがほぼ完全に看破されたに違いない。いっそのこと、何をしていたのかと詰問してくれた方が気が楽だったかも知れない。西岡は何も云わずに台所に立ち、夕食の準備を始めた。それで俺は、"貞操具"のことで西岡に手厳しく文句を云ってやろうと思っていた当初の勢いをなくしてしまった。まして、西岡のいるすぐ近くでハンドバッグを漁る元気など無かった。

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右斜め下

Author:右斜め下
人が苦しむ物語が好きなんだけど、苦しんでいれば何でもいいってわけでもない。
自分でも「こういう話が好きです」と一言で言えないから、好きな話を自分で書いてしまおうと思った。
SとかMとかじゃないんだ。でもどっちかっていうとM。

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