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親父の家政婦だった女 第十一話

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第十話へ
 夕食後、パソコンに向かって大学の実習日程を確認している時である。一通りチェックし終わって、椅子の背に凭れてぐっと伸びをしたら、後ろに西岡が立っていた。
「失礼いたします。お仕事が終わりましたら確認させていただきたいことがあるのですが」
「何だろう」
「先程のことですが、健一様は何かを探して引き出しを開けておられたのですか」
 時間差で詰問された。しかも核心に近付いている。
「いや、……その、すまない」
「西岡に謝る必要はありませんわ。ただ、もし鍵を探していらっしゃったのなら、問題だと思ったのです」
 またも核心。この女はいったいどこまで見抜いているのか。恐る恐る問い返してみる。
「……問題?」
「はい、昨晩カフリングを一段階小さいものに付け替えましたから、その影響で睾丸が痛んでしまっているのではないかと」
 しかし西岡が心配するのは睾丸の方。勃起が抑制される痛みについては言及してくれない。
「いや、……それは、大丈夫、なのだが」
「左様ですか。かしこまりました。では失礼します」
 そして一礼して行ってしまおうとする。不満を訴えるのは今しかない。

「ちょっと待って」
 呼び止めると、西岡はきょとんとして振り返る。仕草がちょっと可愛い。
「いや、確かに、睾丸の方は問題ないんだけど」
「はい」
「この"貞操具"さ、やっぱり日常生活に問題あるよ」
「とおっしゃいますと?」
「えっと、説明するのはちょっと恥ずかしいんだけど、……男性器って、結構頻繁に勃起するんだよ。それが、これが付いてると、勃起が抑制されるだろ? 痛いんだ」
 西岡は真剣な顔で俺の言葉に耳を傾けてくれている。思えば、西岡にこちらからこんなに長く話をしたのはこれが初めてのような気がする。
「かしこまりました。……つまり、」
「うん」
「人前で勃起しなくて済むように、今のうちに抜いておきたい、ということですね」
「ちっがーう!」
「え?」
「そもそもからして、この器具を外してほしいの! 痛いから!」
「まさか健一様、人前で男性器を大きくしたいという願望をお持ちなのですか」
「い、いや、……そういうわけじゃないけど」
「では、ご辛抱なさいませ」
 おかしい。また変に云いくるめられてしまった気がする。どう云い返したものか。どうすれば西岡を説得できるだろうか。どう云えば……この拘束具を解いてもらえるだろうか。

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右斜め下

Author:右斜め下
人が苦しむ物語が好きなんだけど、苦しんでいれば何でもいいってわけでもない。
自分でも「こういう話が好きです」と一言で言えないから、好きな話を自分で書いてしまおうと思った。
SとかMとかじゃないんだ。でもどっちかっていうとM。

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