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[T8] まとめtyaiました【聖トリニティ退魔士会 第十七話】

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聖トリニティ退魔士会 第十七話

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 山下さんが何か説明してくれている。一生懸命頭を働かせて聞かなくちゃと思うが、山道を登りながらだと、脳に酸素を充分に回す余裕がない。とても尋常に物事を考え判断できるような状態ではない。
「『勤め』は、純粋に内なる悪魔を追い出す目的のものから、合宿所の生活を維持するためのものまで多岐にわたります。私たちが訪問する第六作業所には、パン工場と牛乳加工場、それに運動場が併設されています。私たち牧師は、それらを回り、激励します。悪魔憑きの皆さんは、内なる悪魔を克服するために大変苦しんでいらっしゃいますし、退魔士はそれを指導するために一生懸命頑張っておられます。私たちが姿を見せ、がんばりを認め、激励することが、彼らにとって何よりの力の源になります」
「はあ」
 牧師のやることはそれだけか。それぐらいなら俺にもできそうだ。しかし俺はその作業所で働かなくていいのだろうか。いや、いいのだろう。俺は牧師候補なのだから。

 午前中、俺は山下さんに連れられて第六作業所のパン工場と牛乳加工場と運動場を順番に回った。それぞれの工場はかなりの大きさで、すごい人数の『悪魔憑き』がずらっと並んで作業に従事していた。山下さんと俺が訪れると、作業中の『悪魔憑き』や退魔士が一斉にこちらを向いて「おはようございます、山下先生! おはようございます、中村先生!」と口々に挨拶をしてくれた。ああ、この光景はどこかで見覚えがあるなあ、どこだったっけ。山下さんはにっこり笑って「おはようございます、今日もがんばっていらっしゃいますね」などと一人一人の『悪魔憑き』に声をかけていた。悪魔憑きの人達はそれで目に涙を浮かべて感動していた。俺も山下さんに倣って、一人一人に激励の声をかける。俺の激励は多少ぎこちない感がぬぐえなかったが、それでも『悪魔憑き』の人たちは感動して口々に「ありがとうございます!」などと云ってくれた。
 運動場では悪魔憑きの人たちがジャージを着てランニングに勤しんでいた。退魔士と思われるキャソックを着た人が、熱血鬼体育教師よろしく「だらだら走るな! 小田、貴様、何周遅れてると思ってんだ! 本当に克服する気があるのか!」などと怒鳴っていた。小田というゼッケンを着けたランナーは、確かに足取りが重く、ふらついていた。悪魔を克服する気とか関係なく、アレじゃあ、もう脱水症状でまともに走れないんじゃないかな、と頭の片隅で思ったが、退魔士の迫力が怖かったのと、山下さんがニコニコして退魔士に話しかけていたので、まあここではこれでいいんだろうと思うことにした。

 牧師の宿舎に戻って昼食(もちろん前後には長いお祈りがある。もう馴染んでしまった)をとった後、俺は『セミナールーム』という小部屋に案内された。防音壁のような分厚い壁の薄暗い小部屋で、正面に大きなスクリーンがある。俺はスクリーンに向かって座る。小部屋には俺と山下さんだけだ。
「午後のこの時間、中村さんには、ここセミナールームでビデオを鑑賞していただきます。当合宿所と教団のことをよりよく理解していただくためのビデオです」
 山下さんは俺にゴーグルのようなものを渡してくれた。ゴーグルとヘッドフォンが一体化したようなヘッドセットだ。
「3D映像と、3Dサラウンド音声になっておりますので、3Dメガネとヘッドフォンがセットになっています」
「はあ」
 すっぽりと着用すると、視覚と聴覚が限定される。まるで洗脳でもされるような感じだ。
「それと、二時間ほどのビデオですので、もしよろしければ、飲み物でも召し上がりながらご覧ください」
 グラスに入ったレモネード風の飲み物を出してくれる。これはありがたい。山道を往復して喉が渇いていた上に、昼食もちょっと味付けが濃いと思っていたところだ。多少人工的な味がするものの、渇いた身体に嬉しい配慮だ。

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Author:右斜め下
人が苦しむ物語が好きなんだけど、苦しんでいれば何でもいいってわけでもない。
自分でも「こういう話が好きです」と一言で言えないから、好きな話を自分で書いてしまおうと思った。
SとかMとかじゃないんだ。でもどっちかっていうとM。

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